今年7月、横浜在住の藤原一繪教授がカリフォルニア州バークレーを訪れ、彼女の研究と、師である故・宮脇昭博士(1928-2021)の業績を讃えるシンポジウムに出席した。藤原は横浜国立大学の名誉教授であり、同大学を離れた後は横浜市立大学で教鞭をとっている。また、「宮脇フォレスト」として知られる森林造成プロジェクトを通じて、地球がこれからも人の暮らせる場所であるよう取り組んでいる。このシンポジウムでは、宮脇フォレストが若い世代に安らぎと目的意識を与えていることも示された。
子どもたちが宮脇フォレストでの体験を語ったシンポジウムについて触れる前に、この現象そのものを見てみよう。宮脇フォレストは、小規模な土地に作られた、密集して多様な生態系を持つ森で、在来種の成長の早い植物が植えられている。これは、宮脇博士が1970年代に開発した「宮脇方式」と呼ばれる森林再生手法の成果である。宮脇博士は植物学者であり、横浜国立大学の名誉教授で、この分野における自然森林再生の影響力は世界規模に及んでいる。
宮脇方式は、日本の寺や神社、墓地を観察したことから生まれた。そこには、スギを中心とする公有林とは違う多様な植物や木々が生えていた。博士は、寺社や墓地に見られた植生を古来からの森林の残存と推察し、スギなどの公有林は林業や木材利用のために後世に導入されたものであると考えた。そして、このような植生の変化は環境にとって望ましくなく、もとの植生を取り戻すことが環境条件の改善につながると結論づけたのである。
宮脇方式は、観賞用樹木や単一種ではなく、数十種にも及ぶ多様な植生を土地に再現することを目的とする。苗木は密植され、競争により成長が早まる。肥料は有機物のみが使用される。推計によれば、宮脇フォレストは従来の植林方法よりも最大で10倍早く成長し、30倍近く密度が高くなるという。数十年のうちに、本来であれば再生に百年以上かかる自然林と見分けがつかないほどに成長することができ、多様な生態系が形成されることで、昆虫、鳥類、小動物なども生息するようになる。
宮脇方式は広大な土地にも適用できるが、一般的には都市部の数百平方メートル規模の敷地や、今回のバークレーの事例のように学校の敷地など、小さな土地と結び付けて考えられることが多い。都市部においてはヒートアイランド現象の緩和に寄与するほか、炭素を隔離し、土壌や地下水の状態を改善し、景観的にも優れている。こうした森林が至るところに存在するべきではないだろうか。それこそが、藤原教授をはじめ、多くの提唱者の目標なのである。
藤原は宮脇博士の弟子であり、現在、宮脇方式の第一人者と目されている。長年にわたり師と緊密に協働し、その科学的原理の洗練にも貢献した。事実、博士の退職後にはその職を引き継いでいる。彼女は世界を駆け巡り、地域社会に復元プロジェクトへの参加を呼びかける精力的な活動家である。研究領域は世界の植生学であり、温帯落葉林、湿地植生、沿岸植生などを含む。さらに都市部の植生にも注力しており、環境計画や土地管理、復元といった分野にも関わってる。今回の夏のバークレー訪問も、その一環として歓迎され、中国や東南アジアからアフリカやヨーロッパに至る数多の地域でおこなってきた活動の延長線上にある。
なぜバークレーなのか?
シンポジウムはバークレーにあるマーティン・ルーサー・キング・ジュニア・ミドルスクールで開催された。同校は地域に複数存在する宮脇フォレストの一つを有しており、その背景にはニラム・パティルの尽力がある。彼女はカリフォルニア州公立学校で気候リテラシーと科学を教える教師であり、子どもたちに気候変動への行動を促した功績により、2022年に『タイム誌』で全米の革新的な先生の一人に選ばれた。その取り組みの一つが、学校敷地内での宮脇フォレストの植林である。
パティルは北米で初めてとなる学校敷地での宮脇フォレスト造成を主導した。彼女の取り組みは、バークレーにおける初の宮脇フォレストを設置するための条例制定にもつながった。その際には、資金確保を訴えるために市議会に出席した生徒たちが大きな支えとなった。
このシンポジウムには、公立高校の教師や生徒、市の政治家や職員、教育委員会のメンバー、地域住民、ボランティアなどが参加することができた。最も著名な講演者は藤原教授であったが、他にも注目すべき人物が登壇した。パティル氏に加え、ジョージア大学で40年にわたり生態学を教えたエルジーン・ボックス博士がいた。彼は1983年にアルゼンチンで宮脇博士と出会い、以後自身の研究に宮脇方式を取り入れている。また、『Mini-Forest Revolution』の著者であるハンナ・ルイス氏、さらに宮脇フォレストの世界的な植林活動を追った長編ドキュメンタリーを制作したロサンゼルス在住の映画監督アンジェリーナ・リー氏も名を連ねた。
とはいえ、シンポジウムの最大の主役は小学校や中学校で実際に宮脇フォレストを実践した子どもたちであった。特別パネルディスカッションでは、生徒たちが植樹の体験を振り返り、数年を経て小さな森が育ち始めた現在の心境を語った。多くの参加者にとって驚きだったのは、その森が生徒たちに大きな安らぎと心の平穏を与えていたということである。
宮脇フォレストの環境的な利点はすでに広く知られている。今回明らかになったのは、青少年への精神的な影響である。森は彼らに希望を与えている。たとえ小さな区画であっても、自ら行動し世界をより良く変えることができるのだという感覚である。複数の生徒が、この体験を通じてさらに行動を起こす意欲を持つようになったと雄弁に語った。この経験が今後、生徒たちをどのような行動や進路へと導くのかは、まだ明らかではない。しかし、藤原教授が宮脇博士の志を継いだように、すでに彼女の活動を引き継ぐ後継者が数多く育っていることは間違いない。
本稿は、このテーマに関する二部構成シリーズの第一回である。次号では、藤原教授をはじめ、この活動に関わる人々へのインタビューをお届けする予定である。横浜シーサイダーの創刊者であるライ・べヴィルは、カリフォルニア大学バークレー校で日本学を教えており、今回のシンポジウムに出席した。横浜で生まれた彼の娘カイリーは、バークレーにおける初の宮脇フォレストの資金を求めて市議会で請願した若者グループの一員であった。
